ひとつの殻の中で崩壊して往く/ただのみきや
 
わたしは
片付けきれない部屋
足の踏み場もなく
散らかったまま
古い紙袋からは
見つかってはヤバいものたちが
虎視耽々こちらを窺う
ベッドの中には
初恋の人を模した
バラバラの詩体
声もなく笑う鍵もなく壊れ
薄緑のカーテン
ざわめき風の指先
齢を重ねきれず
こと切れる日を待つ
行きつ戻りつの秒針が
皮膚に苦く刺青する朝
喚けど雨は降り注ぎ
色を失くし茫漠の
銀河を漂う淡々と
刻まれた棺の面持ちで
撒き散らした視線の触れ
妄想を孕み鬱蒼が絡む
賞味期限遠く過ぎ去り
背中の割れた秘密を吹聴する
誰も知らない童話の切断された手足
黴臭い風が
捲りあげる脳裏に
古くても鮮明な染痕
顏 顔 顔に埋め尽くされて
眠れない眠りの雫に浮かぶ
部屋は深く呼吸しながら
閉じて往く
冷たく蒼い魚のまま
そこに在る夢を燻らせて


    《ひとつの殻の中で崩壊して往く:2014年6月29日》





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