ぐしゃぐしゃに食い散らかす ? Meatlocker ?/ホロウ・シカエルボク
いない
「死せる魂の道程について何か話せることはあるか」
そう尋ねてみると
やつはぶぶ、と短く翅を鳴らした
窓に隔てられていることを忘れるなよと
そんな風に話しているみたいに思えた
ルビーのような虫は何度か足場を確かめたあと
尋ねるべきどこかを思い出したかのようにふっと飛び去ってしまった
そんなときの虫は記憶のようだと俺は思うのだ
朝は来ないのだ、俺が待っていたのは
自転も公転も関係のないものだった
軸の無い軌道に漕がれて迷い蛾になって
やがて俺の背にもルビーのような血生臭い翅が生えるだろう
甲殻類がとうとうどこかを食い破った、俺は叫び声を上げて……
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