子守唄/木立 悟
何度も何度も触れてくるのに
けして苦しくなることのない
数え切れぬ手 ふたつの手
近づき 重なり
離れゆく手
離れ 離れて
響きわたる手
さくさくと向かい風
にじむ水飛び越え 飛び越え
道端に並ぶ
雪の犬の目
わしわしと掴みかかる
光と爪を肩にのせ
背中を押され 歩きつづける
鉄の家々のはざまの道
水が響く
鉄が響く
眠れない人のすぐそばで
眠りたいのに眠れない子が
子守唄をほしがっている
歌えないでいるうちに
子はいつしか眠ってしまう
眠れない人は寝顔を見つめ
いつ子守唄を歌えるのか
どんな子守唄を歌えるのかを思
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