丘の街で (三)/
信天翁
なぜか ほほえんではくれない
日当たりの悪い 我が家の庭隅は
色艶に乏しくなった 紫陽花一株
水無月の梅雨空となったのに
葉っぱばかり大手を広げているばかり
たそがれ 近くとなり
夕餉の支度を促すかのように
坂のしもから拡声器の声がなびいてくる
とーふ とーふ とシンプルだが
家庭のぬくもりを盛り立てながら
あゝ 一日の優しさがゆらめいている
丘の街で
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