詩を書く/游月 昭
 
かし、女というものは、男からすれば、極めて我慢強い生き物である。10ヶ月の間、次第に重くなる胎児を腹に抱え、買い物に出掛けたり炊事洗濯までやってのけ、挙げ句の果てに陣痛、出産。と思えば、果てではなく、育児が始まるのである。
 私がどこまで胎児でいるかは決めていないが、陣痛までいると大変な痛みに襲われそうなので、2、3日で引き揚げるとしよう。
 そういえば、姉が居る筈である。鳴き声が聞こえない。別に姉の泣き声を聞いたところで、懐かしいなどと思う訳ではないのでどちらでもいいのだが。
 腹が動いた。否、母が立ち上がったようである。歩く衝撃が大太鼓の様に響いて来る。テレビの音が聞こえなくなった代わり
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