朝焼け売り/智鶴
 

もうすぐ一面に飾り出す頃だよ
まるで繋いだ掌みたいに

鉄色のフェンスに腰掛けて
朱色に街を塗り替える
その度、街は少し震えて
思い出したように灯を灯し始める
朱い空に頬を染めて
もうすぐ夜だね
名残惜しそうに呟いた君の横顔に
そうだね
一つ溜息を吐く前に
夜空を温かく彩ろうか

夜が怖いなら手を繋ごう
朝が来るまで隣に居ようか
少しでも柔らかく眠りにつけたなら
朝焼けの匂いに誘われて目を覚ましたなら
そうしたら
真っ新なキッチンでビターの珈琲を啜りながら
一緒に朝を色付けようか

君の頬に薄らと
朝焼けの色が差し込んで

錆色のフェンスに腰掛けながら
今日も街に筆を走らせる
この街の、この夜の、この世界の
美しい色の全部、
僕等だけのものにしようか

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