ぱくぱくぱく/栗山透
ある晴れた日のこと あかりは右手に
文庫本を持ったまま 空を見つめていた さっきから
カラスほどの大きさの白い鳥が ゆらゆらと 飛んでいるのだ
ゆらゆら ゆらゆ ら
見たことのない鳥だった
あかりは小さいころから 鳥が好きで
小学生のころは鳥が出てくる絵本をたくさん読んだ
図鑑を見て絵を描いたりもした
けれど、そのカラスほどの大きさの
白い鳥のことはどの本でも見たことがなかった
とくべつ きれいとも思わなかった
白鳥のように透きとおるような 清潔感があるわけではなく
ただ、白い冷蔵庫のように、色が白いというだけだ
その白い鳥は 公園にあるちいさな池の上を飛んで
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