幻影のバラード/クローバー
いつか見たあの子供に
名前を付けることはできない
記録に残せない会話を何度もして
僕はあの子を責めたりもした
正しいことを言う事が正しい
そう責められて
実際は責めてなどいなかったのだが
そうは言ってもしょうがないじゃないか、と
彼はもともと臆病だったから
臆病なのにいつも正しくあろうとしたし
また正しかったから
少しずつ声を失くしていった
掃除は少しずつ進み
汚れは少しずつ薄くなっていく
僕が軽くなっていく
それもすべて間違っているんだよ
と、君は言わなかった
挨拶は大事さ
と、僕は最後に言いたかったけれど
それは声にならない
脚をもらっても
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