キルレシオ/opus
 
荒れ果てた波
遠い雷鳴
深い雨雲

机の下に
犬が身を隠す
大丈夫だよと手を差し出すと
舌を出し
丸い瞳で
こちらを見つめる

静かな予感が
ふわふわと漂い
私を糾弾する
もしそうならどうする?
きっとそうだよ?
覚悟はあるの?

光が明滅し
雷鳴が轟く
空気が強張り
時が止まる

同じ過ちを繰り返すんだね。
どうにかなると楽観視している。
救われると思っている。

犬が手をペロペロと舐める
前髪が顔にかかり
涙がこぼれている

荒れ果てた波
遠い雷鳴
深い雨雲

犬の頭を撫でる
いつもより熱めのお湯で
風呂を入れる
溜まるまで、
夕飯の支度の続きを

その日の夜空には
真ん丸の満月が一際大きく
輝いていた
私は犬と一緒に
ベランダに腰掛け
彼の帰りを待つことになる

重要なのは
静かに寄り添うこと
時にはバカにすること
時には抱きしめること
受け止めること



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