屋上スタイル/千月 話子
 
世界から浮かび上がるまで


 雲が左へ流れる速度 が違う
 髪が左へ流れる速度 が違う


空中で赤い風船が風をじらして
ふらふらと意地を張って いる
糸を離した幼子の想い 想い 
重い おもり 吊るして
それは、可愛さと怖さの表裏一体
閉じ込められた異質の空気が
目の前で我がままを爆発させて
降り注ぐ風を汚してしまわぬように
耳を塞いで静かに祈ろう


屋上の清涼を感じているんだ
 
渦巻きよ 私を弄ぶな
濃い影よ 私を呼ぶな
 貯水槽の少女よ
  鉄柵の男よ
   手摺りを歩く夫人よ
「さようなら・・・・・・・」


私の緑は屋上で繁殖する


ここがいつも晴れなら いいのに





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