ネコジャラシ/山部 佳
瓦礫の残る空き地は、日差しに
揺らめいていた、陽炎の向こうに
はるか彼方に、元気の良いビルが林立する
忘れ去られた、この空き地に佇んで
滅んだ営みの亡霊が語る
工員たちの笑い声や、怒鳴り声
泣いたり笑ったりしながら
彼らは毎日働いていた この場所で
路頭に迷った幾人かは
自ら命を絶ったと聞いた
満載したトラックが、頻りに出て行った
ラインを動かすモーター音
走り回るフォークリフトの警告音
元気だった頃の幻影がよぎる、白昼夢
錆びたスパナが、天を指している
横の地面に根を張った、ネコジャラシが
かすかな熱風に、ゆらゆら揺れる
瓦礫の隙間から、這い出すように
名も知らぬ雑草も、顔を出している
忘れ去られた、この空き地で
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