羽根/アンドリュウ
た
妻はしばらくはねの感触を愉しんで
それを棄ててもいいかときいた
私はおどけた顔で軽くうなずいてわらった
近くでよく見れば顔は歪んでいたはずさ
犬と二人でゴミ置き場に並ぶ
沢山のごみの袋を見ていた
右から三番目の袋から
私のはねが少し飛び出していた
手とってからだに付けてみたい
そんな気もしたけど
もう飛べない事は嫌になるほど自覚していた
やがてゴミ収集車が来て
あっけないほど簡単に
はねはタンクの中に
他のごみと一緒にローラーで
粉砕され詰め込まれていった
ベキベキとはねの折れる音が
耳に届いた時
微かな痛みを肩に感じた
道の向こうには夕陽があり
ゴミ収集車はそれに向かって走リ去った
頬をつたう一筋の涙は
哀しかった訳じゃない
ただ 夕陽が眩しかった
だけさ…
戻る 編 削 Point(5)