羽根/アンドリュウ
妻が押入れの奥の
古びた柳行李を出して
何かを整理している
その後ろ姿が丸く凋んでみえて
少し不憫に感じた
これはもういらないわね
そんな事を呟きながら
妻が手にしているのは
見覚えのある一対のはねで
ところどころ変色して色が変わっていた
私は何か言いかけて
言葉に詰まった
あのはねは長男が生まれた時
しばらくは飛ぶ事は諦めようと
祖父の形見の柳行李にしまったのだ
それから次男が生まれ
父が死に娘がうまれ
私は荷物を運ぶロバのように
黙々と働いてきた
最初は考えないようにしていた
空の事も柳行李にしまった
はねの事もすっかり忘れてしまっていた
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