透ける 風嘯 (すけるとん ほいっする) /るるりら
 

聞こえ難い耳が、
人の言葉だけは聞こえるのが うちの母。それって‥‥‥
母は詩人で
わたしは
普通の人だ

背後のスピーカーから、雑踏の音を流して、自然の環境をバーチャルに再現すると
ここは、まるでフェルトでできた車のよう。白い部屋にいながら ゆっくりと往来を進む。
機械が 雑踏の音と会話とを聞き分け、会話だけを拡張し 耳にとどけるらしい。
耳と補聴器の接触が悪いと ホイッスルが鳴る P---
「ハウリングですね。」スピーカーと集音の距離は 耳の穴より小さい
鼓膜のない洞窟に響く 空想世界の音音音

音が可視化され デジタルな色彩が表示されていて画面の中で上下して揺れている
なるほど それが母の音なのか


店を出ると、
分析されて ちりぢりになった音たちが、私たちの耳に遡上してきた
音は、みんな笑いながら わたしたちと いっしょに祭囃子の道を歩く
仲の悪い親子が 顔を近づけても ハウリングしない幻のような祭の日

戻る   Point(16)