透ける 風嘯 (すけるとん ほいっする) /るるりら
 
慈愛の糸でできた繭のような部屋は、安心だ。
管制塔のように 耳の中の音を分析する。


母の補聴器の購入のために 街にでた
街は祭り日。
耳の不自由な母と 私の世界は どれだけちがうのか
目の不自由な母と 私の世界は どれだけちがうのか
同じ場所にいても、同じように祭を共有しているとは思えない。
けれど、到着した補聴器の売り場は、静かで 繭の中のよう

母の耳は そうとう悪いらしい
鼓膜は、無い。鼓膜すらないと、人の耳は聞こえるものなのか。
たまに 会話が成立する アレは、なんなのか。
店の人が云うには、どうやら 母は
語音分別機能だけは、優れているらしい。


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