広場の朝_Ldn./藤原絵理子
夜が明けたよ
夜更けまで降っていた
淋しい雨も いつの間にか上がって
ギャラリーの軒下に逃げていた鳩たちが
ライオンの頭に集まり始めた
いろんなことがあったんだよ
いわれのない憎悪や
知らないものへの恐れ
分かりあえるまでの
いくつものすれ違いが
「あたしたちは みんなで
ひとつの船に乗って
宇宙の彼方へ向かう 旅をしている
この船からおりることはできないんだよ」
メンフィスのおじさんはブルースを歌ってる
モスクワの若い画家はターナーを論評してる
エルサレムの商人は夢見るように噴水を眺めてる
ボンベイの婦人は鳩に餌をやってる
ホンコンの留学
[次のページ]
戻る 編 削 Point(5)