一輪の日々/ハァモニィベル
何も隠せない快晴の或る日
昼でも夜でもない街の中を
わたしは 俯いて歩く
恐れられる吠えない犬のように そして
世界の綻びを拾い上げ 何もない空を見上げる
機械仕掛の戦略を支持する群集が
時計の針を読みながら
皆んな 俯いて歩く
笑いながら吹き過ぎる風を躱すように そして
持ち過ぎた物が溢れ 忘れていた空を思い出す
嵐が雲を吹き飛ばした或る日
希望はどこへ、消えたのか?
彼女は俯いて歩く
決して沸騰できない海のように そして
無口な女は首を伸ばし 加速する空を見上げる
一見普通にしか見えない 全てを 呑み込む
意志は孤独だ
美しく光る夜に
死者の気持ちになることがある
わたしは俯いて歩く
森へひとり帰る狼のように そして
毒にも薬にもならない 一度終わった過去の、
飛距離が足りない栄光の病巣に、
空を見喪い、 クラクラとしながら……
せめて
君のための
一輪の勇気でありたい
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