小蜂/イナエ
 

 踏みつけられ引き抜かれ
 それでもひっそり開く自然の花
 その花粉を運んで触媒となり
 子どもらの食料もらって 
 互いの繁栄に力貸し合い
 平和に暮らしていた小さな蜂

わたしは
精一杯羽根を鳴らした警告を無視し
逃げることなど出来ない幼虫を
握りつぶし
いま 親の蜂を殺そうとしている
周りを飛ぶ蜂の羽音が声になる

 人間に嫌われていているとしても
 人間たちとは争いたくないのだ
 早くこの場を離れてくれ
 
 アリの餌となった幼児の葬送と 
 この地を立ち去る惜別のうたは 
 聞かれたくないんだ


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