朝のソネット/藤原絵理子
思い出している きみの髪 指先
朝のカーテン越しに見えた マロニエの花が
あたしには似合わない と笑った
「シーツを巻いとけばいいよ」 と言った
ピアノを弾き始めたら
あたしは 夢中でスケッチした
きみのしなやかな指が
激しく 優しく 緩やかに 愛撫するのを
古いフランス映画みたいな
悲しいFinばかりじゃなくて
Je te veux 歌わせて きみの隣で踊って
はしばみ色の眼が 覗き込んだ
愛の重さに 耐えきれなくなって
あの橋は もう誰も渡れない
戻る 編 削 Point(3)