今はこんな気分で/ただのみきや
蹴破る足はないが
閉された扉の前で待つ気もない
おれ自身が監獄
だから言葉は旅人だ
去り行く背中に
翼など無く
タダノモジノラレツ蟲は
預言の首飾りの哀歌の凶器の
無価値の無意味のありふれた
変幻の魔物の川面を跳ねる
石の流れる血の叫ばない傷口
誰も見向きもしない石ころを
拾って持ち帰る誰かがいる
救う腕はないが
黙っていられるほど仙人でもない
おれは壊れたラジオ
時代遅れの表現を好む
ノイズの霧中から
遠く誰かの
記憶の花を蘇らせる朝
《今はこんな気分で:2014年6月14日》
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