阿保がいる/御笠川マコト
 
四半世紀働いて
やっと気がつく阿呆がいる
聞こえのいい肩書きを貰ったから
退職の朝までは
それにすがる

龍の刺繍が入った
ヤクザなハンチングを見つけて
買いたい俺
買う金もある俺
でも
買えない俺

店先の姿見に
柔らかな革の鞄を握りしめる
阿呆を見つけた
そして
なんか全然意に添わない方角に
来てしまった
俺。
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