可能性の地獄/yamadahifumi
 
どまって、この実例について考えてみよう。

 
 ミシェルウェルベックという作家がいる。僕はこの作家の『素粒子』という作品を先日に読んだのだが、彼はこの手の問題を村上春樹よりもはるかに、厳しく、胸を突く取り上げ方をしている。彼のこの問題の扱い方は全く容赦無い。
 作中の、中年に差し掛かったクリスチヤーヌという女性は次のようにため息をつく。


 「(略)でもしがみつくしかない、なぜなら愛されたいという気持ちを捨てることはできないから。女は最後までその幻想の犠牲となるのよ。一定の年齢を越えれば、女にできるのは男のペニスにすり寄ることだけ。愛されることはもう二度とありえない。男ってそんな
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