火と水/山人
と風の仄かな舞いが億年の岸壁の側面をなで、星屑はその間隙を埋めるようにかがやきだし、世界を包んだ。
世界はいま閉塞し、広がりをなくし、薄味の日毎を繰り返し、ただ時間とともに発泡している。根拠の裏側すらもなく、炎のように走る光線のような人々だけのために世界は存在し、吐き捨てられた生き物の発話さえも置き去りにされている。
年月の井戸の中に今、水は滞り、ときおり瞼を開け流れ出ようとする。
遠い水のささやき、貝殻の遠方から奏でられる響き、いつか水は意志を持ち頬をなでるのだろうか。
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