火と水/山人
 
火が燃えている、火はささやかに舞い、わずかな黒煙を伴い燃えている。
すでに燃え尽きようとしているその男は、小さなともしびに油を注ぐ。
日が燦々と差す部屋の片隅の小さな戸棚を開けると、油の瓶が並んでいる。
乾いた土毛色の喉に、ためらうこともなく、思考もせず、ただただ油を注ぐ。
火の食指が動き、油に引き寄せられ、火は鼓動を強め、赤く血流を促し、血は滾りその命はとめどなく火と共に乱れながら狂乱の宴を開始する。はらわたから油が噴出し、乾いた口は言語で濡れ、ぬらぬらと言語は男を包み込みその濁音と怒声が新たなる炎を引き寄せ舞い狂う。


かつて静かに水は流れ、健やかに時を育んだ。やすらかな闇と風
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