樹晶夜 【横書Ver.】*改訂版/ハァモニィベル
 

ウリエルの忠告を聴かず
偽りが揺れる波間で
肉欲に押し潰されながら
肌に喰い込んでいく
「幸福」の声が

繰るように
広げられ、返される
その、

主と悪魔の戯れのような

樹状に拡がる世界の
闇の中の不安なやすらぎ

 *

突然、知らない音楽が流れ出す
真夜中に

腹を抱えて笑い
転げ
落ちた
濃いコーヒー

音量は破裂し

手がかりはビチョビチョ

黒い液体の一つの流れが
まるで獲物を狙うように床を這っていく
憂鬱を笑うような速度で・・・

樹状に
どこまでも
分岐しながら・・・

明日もまた配達される

《廻っている世界に溶け込む痛み》

 マンデヴィルの蜂に
  刺されたような・・・

 樹状の痛み
   が、
 シミュラクルに

 拡がってゆく・・・

主と悪魔の戯れのような

樹状に拡がる世界の

どこか一つの枝に

不眠症のカナリヤはひとり
 寂しく、樹上の詩を
 謌いつづける

朝が眠る部屋の中で




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