高原の駅に/
藤原絵理子
火の山は
融けた岩と灰を降らせた
あたしのこころに壁を作った
驟雨の日 傘を置き忘れてきた
古びた駅舎のベンチにぶら下がって
薪ストーブの熱に 涙は乾いて小さな結晶に
誰かが あたしの名前を呼んでいる
損なった物は 二度と元に戻れない
雨だれが 地面から掘り出す
角の丸くなったガラス片は眼球
白く細い石灰石は骨 壁の中の水溜りに
列車は定刻通り 再び誰もいなくなった
行き先を失った いくつもの悲しみが
雨に濡れたアジサイの横に佇んでいる
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