ヤマダヒフミの消失/yamadahifumi
 
になっていた。彼は、自分は既に世界に見捨てられたのではないのか、と次第に考えるようになった。自分はこの世界に全然存在していない『無』であり、そしてその『無』としてこの世界に儚く消えていくのではないか?。彼のその懸念は、三十の年になって、急に現実味を帯び始めた。


 彼の現実生活ーーーサラリーマン生活は実に貧相で惨めなものだった。彼はただ毎日、会社に行って与えられた業務をこなすだけのロボットに過ぎなかった。それも、いささか、出来の悪い。彼は会社での飲み会にも出席せず、また同僚の誰ともプライベートな関係を築いてはいなかった。とはいえ、彼の会社の仲間内との関係は最悪のものという事でもなかった。彼
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