樹晶夜 【縦書Ver.】/ハァモニィベル
ルの蜂に
刺されたような・・・
樹晶の痛み
が、
シミュラクルに
拡がってゆく・・・
知らない音楽が流れ出す
真夜中に
腹を抱えて笑い
転げ
落ちた
濃いコーヒー
手がかりはビチョビチョ
音量は破裂し
黒い液体の一つの流れが
まるで獲物を狙うように
床の上を這っていく
まるで憂鬱を
笑うような速度で・・・
やがて、
樹状にどこまでも分岐しながら・・・
ウリエルの忠告を聴かず
偽りが揺れる波間で
肉欲に押し潰されながら
肌に喰い込んでいく「幸福」の声が
闇のどこかで繰返される
主と悪魔の戯れのような
樹状に拡がる世界の
枝のどこか一つに
不眠症のカナリヤがいて
ひとり
寂しく
樹晶の詩を
謌いつづける
朝が眠る部屋の中で
戻る 編 削 Point(1)