人間の本質を露呈させるものとしての文学/yamadahifumi
 
よう。すると、その時、僕は次のように書かなくてはならない。

 「僕が月を見上げると、それはまるで誰かの醜く歪んだ笑顔のようだった。僕は『クソッ』とつぶやいて、地面にツバを吐いてから、また歩き出した。」

 これがいい文章かどうかとはともかく、しかし、芸術とはこのように描かなくてはならない。描かなくてはならない、というのは、別に表現自体はなんでもいいのだが、しかし、それは徹底的に内面に忠実でなければならないという事だ。客観的に考えるなら、月は誰かの醜く歪んだ笑顔であるわけはない。科学においてはそれは間違いである。科学というのは感覚の学問であり、それは芸術とは持っている物指しが違う。それらは
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