人間の本質を露呈させるものとしての文学/yamadahifumi
 
を言おうとするなら、私はもう一度アンナ・カレーニナを最初から書かねばならない」と言ったという話がある。トルストイの言う所は正に正確に、芸術というものの本性を突いている。トルストイが言いたかったのは、つまりアンナ・カレーニナという作品の内在性はその全体の文体、その形式=つまり肉体と一致しているという事である。ここでは肉体の形と内面の形はぴったり一致している。だから、形を無視して、内面のみを抜き出したり、その逆をしようとしたりする事は不可能である。トルストイの伝えたい事は、アンナ・カレーニナという作品の全文章とぴったり一致している。だからこそ、トルストイはアンナ・カレーニナを書いたのである。これは芸術
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