見舞い/山部 佳
「はっきりした病気でよかったわ」
すでにベッドに張り付いてしまった彼は言った
顔のつやも申し分なく
話すことも、普段どおり
少し皮肉っぽい物言いも
ことさら普通にしようとしている
その雰囲気を演出している
私は、それを気取ることを
無理やり拒絶することに疲れる
窓辺に白い百合
開けてある窓から流れこむ
風向きによっては
気分が悪くなるほどの香り
彼の嗅覚はもう
そんなことに煩わされることが
ないのだと…気づく
うららかな午後のホスピス
職場の馬鹿げた噂話に笑いあう
昔の失敗談に大笑いする
生と死の境界がぼやけてくる
私にはわからなくなる
白い菊の祭壇で
写真に収まった彼を見たとき
初めて彼が逝ったことを知る
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