ミシェルウェルベック『素粒子』書評/yamadahifumi
 
僕は言った。それを少しばかり説明する必要があるだろう。まず、主人公はミシェルという優秀な生物学者と、そしてブリュノという、通俗的な快楽主義者の兄弟二人である。そして兄のブリュノはただ、自分の性的快楽=幸福を求めて突っ走っていくのだが、彼はただ、幸福にも不幸になれずに、ただただ、女の尻を追いかける事しかできない、滑稽で悲惨な生き物である。彼は四十を越えて、『四十代の危機』に突入しつつある。四十代の危機とは、男が四十過ぎると、何かもう闇雲に、とにかく闇雲に若い女の尻を追いかけるようになる事を指す。そしてブリュノは自分の快楽の為に、ただもう突っ走っていくのだが、彼のこの冒険はことごとく悲惨で、滑稽で情け
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