菌類の先端/
遙洋
わたしにも速度がある
誰にでもあるというからには
あるに違いない
とても遅い
祖母たちの
三度目の転生にすら
追い抜かれる
巨樹のさかえた森の
最後のらく葉の日にすらも
間に合わない
かぎりなく静止に近いとも言える
わずかに動的であるとも
だがたしかに
わたしにもある
そうに違いない
手を伸ばすしぐさの終点
遠い未来にその先端が
いちどきに歓声をあげながら
増殖する夢を
毎夜みている
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