輪郭のない自由/いとう
 
由。
この言葉は、その対極にある。
輪郭は存在しない。
すなわち、「自己」と「他者」が絶対的に孤立した状態として捉えられておらず、
その結果、侵食などといった概念から解放されているのだ。
区分がなければ侵食は起こらない。
あるいは、侵食こそが私たちを私たちたらしめる。
この詩は「ぼく」と「エム」の物語ではなく、
「ぼくとエム」の物語だ。
エムがぼくを形作る。そして、ぼくがエムを形作る。
ぼくはぼくであると同時に、(エムの一部ではなく)エムを形作る一部であり、
エムはエムであると同時に、(ぼくの一部ではなく)ぼくを形作る一部であり。
そのような世界。そのような自由。
そして
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