どうか優しく眠ってください/松本 卓也
 
どんだけの無意味さ、重ねたっけ
真心と優しさと愛情と後悔
あと、何だっけかの夢物語

最高の笑顔の前に並べられた思い出の品
僕は多分、貴方と何度か言葉を交わしたことのある
ちょっとした存在の一員でしかないけれども

その笑顔に、黒く縁取られた写真と
参列者たちの涙に彩られた惜しむすすり泣き
多少なりとも見知った人々の嗚咽と同情
何一つ、薄っぺらい僕の瞼すら重くする

どうか、どうか優しく眠ってください
焼香を捧げる作法すら知らないけど
見知った誰か達の惜しむ声に
貴方の刻んだ生き様は
僕ですら涙で見送る事ができるほど
暖かく優しく意味のある道を
刻んで愛する人の未来を
照らして慰めているんだから

心から涙を流せるほど
心から生き様を惜しむほど
ほんの何年か先に生きて
多分ほんの何年か先に逝って

どうか、どうか微笑んで見守って
貴方の愛した家族、友、生き先
遺影の中で浮かべる優しい微笑
いい加減な生き方さえ振り帰させるほど
冷たい痛みに溢れて心に棘を刺す

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