畦道にて/山部 佳
 
は蛇類が大嫌いだが
グロテスクな腹を曝して
細い畦道の真ん中に静止した
蝮は淋しかった

私と犬は、来た道を引き返した
田んぼの土手に座って
死んだ蝮の横たわっている畦道を見下ろした
そして、ため息をついた
犬が私の顔を舐めた

ほどなく森の木の上から
3羽の鴉が飛来し
賑やかに蝮をつつきまわして
咥えて飛び去った

私は、掌に犬の感触を確認しながら
静まって、再び長閑になった
蓮華草の海を眺め
志賀直哉の小説を思い出していた

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