畦道にて/山部 佳
犬と歩いていた畦道
蓮華草の洪水、うららかな風
晩春の自然は生命を礼賛していた
突然、犬が強く引っ張る
そして、嬉しそうに吠える
畦道の行く手に
冬眠から覚めた蝮が横たわって
ぬらぬらと陽光を浴びている
そう言えば、こいつは蛇が好きだったな
いや、野鼠も好きだ
取りあえず、ちょっと道を開けてもらおうか
私は小石を拾い上げ
ひょいと…なんの気なしに
驚いて、叢にでも滑り込んでくれたら、と
軽い気持ちで投げた
何の音もしなかった
捩れた鎌首をあげては倒れ
虚空に向かって威嚇し、また倒れ
犬は大喜びで吠え立て
やがて、蝮は動かなくなった
私は蛇
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