月見草/
山部 佳
昼間の静寂が緩む
真夏の夕暮れは、気ぜわしく
この街に戻ってくる
黄昏の土手に、月見草が咲く
行き交う人の影に揺られて
年老いた夫婦が、ゆったりと
杖をついた妻を抱えるように
満ち足りている
諦めている、微笑みに
月見草の色は、涼やかに
夕暮れの藍に沈んでいく
自転車の少年は
夕照を追いかけて走る
待っているもののために
まだ色のない、汗を流す
一夜が明けて
萎んだ花と
傾いた白い月が残る
もうあせることはないのだ
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