ビー玉沿線/角田寿星
 
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文献によればビー玉沿線の原形が見いだされるのは乾永4年というから
はるか安土桃山時代まで遡る。むろん当時は鉄道の概念はなく線路など
というものは存在しないがビー玉を直やかにすべらせるために地面に溝
を彫りビー玉を目的地まで届けることがすでに試みられていたという。

光を反射させながら転がりゆくビー玉は現代ではごくありふれた光景で
あるが当時の人々には珍奇なものとして映ったらしい。尻をはしょって
髷と鼻を地面に擦りつけんがばかりにしてビー玉を眺める沿線の庶民の
さまが楚形東琳のかの有名な戯画に克明にあらわされている。ちなみに
竹市南瓜のビー玉沿線の句は東琳のこの戯画に触
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