ウイルス効果/ただのみきや
 
食堂のテレビで
自分の夢のドキュメンタリー映画を見ているような
そんな姿に変わっていった

(やっぱりこういうのが ……っぽいよなぁ )

ありふれていて面白みがない
そう言われたことがある
否定はしない

(これからこの注射を使ってみたら…… )
考えずにはいられなかった
考えて考えて考えた末に
わたしは注射を打った
わたしの詩に
ではなく 自分のアタマに

わたしの詩は相変わらず
家で茹でて喰うもりそばだった
だがウイルスは言語中枢には効いたようで
わたしの日常会話が現代詩的なものとなり
隣人とのコミュニケーションを破壊していった
おかげで一人の時間が増えて
ますます書くことに没頭してしまう

この一連の出来事を文章にして
ホラー専門誌「死と死相」の読者体験談に送ってみたが
結局載せてもらえはしなかった
――もう少し
 アルデンテ気味でタバスコを効かせてみようかしら



          《ウイルス効果:2014年2月2日》

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