ふたつ めぐる ?/木立 悟
土を穿つ夜の影
かたちにかたちを閉ざす影
底の見えない
水のような影
径をふちどる暗い静脈
聞こえないものを包みながら
風から風を奪いながら
ゆらゆらとゆらゆらとひろがってゆく
ふたつの生を呑みこんで
なお足りぬほどのささやきが
黒い襞を伝い なぞり
街の奥へと歩んでゆく
灯は一区画ずつ消えてゆき
曇だけが明るく地を映す
遠く鳴る音 薄紅の音
ひとつひとつ 冷えてゆく音
剥がれ落ちる水の皮
空をまたぎ すぎる図書館
いきどまりの路に満ちる蜜
錆びた柱の内のみの昼
石が石に触れ
色は音を置いては昇り
波をつらぬき 昇りつづける
径をゆく声
重なるふたつを指さしながら
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