あじさい/藤原絵理子
 

青空を集めている
あじさいのつぼみ
青いガラス瓶
明るい陽に揺れる

痩せ細った手で
筆の先から
搾り出したような 一枚の絵
淡い青のあじさい

木立に濾された光は
揺れる葉の上に転がって
小さな音をたてる
サティのピアノが聞こえる

白い扉のホスピスにいた
荘厳ミサ曲より
ジムノペディが似合っていた
彼女の淋しい笑顔

やがて灰色になる この庭に
青空を吸い込んだ
淡い青のあじさいが咲く
白い壁に掛けた絵のように

彼女の不在は
所在無げな白い椅子の上
蟻がせっせと
夏の準備をしている

戻る   Point(7)