だれもしらない庭で/石瀬琳々
だれもしらない庭にだれもしらないあなた
わたしたちは夢をみた
はつ夏のひかりのなかで
あれはあなたの花
ジャスミンのむせる匂いに
秘密めいたあそび くちびるの感触をおぼえた
だれもしらない庭をわたしたちはもとめた
若葉が降りそそぐあなたの目のなかで
ただひとつの言葉をさがした
魔法だった その言葉をくちに含んだ時から
わたしたちの世界ははじまる
夏草がからまるわたしの指に
あなたはそっと手のひらを重ねて
ね、
ささやいた 小鳥のような仕草で
息がとまるくらい 静かな風が流れて
翼が生える夢をみた
きっとわたしたちの背中で育っていた
ひととき の愛
それとも千年のねむりを貪るように
わたしたちは夏草を泳ぐ 終わらない遊戯
ね、
だれもしらない庭にだれもしらないあなた
指をつないで眠った
明日など知らないほほえみで
あなたがたとえわるいひとでも
あなたをたとえ見失ってしまったとしても
ジャスミンの花を髪に挿して
若葉が降りそそぐあの庭で
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