梅雨/山部 佳
 
汽車の黒煙は
青い田を流れて
薄らいで青空に混ざった
暑い夏が、あった

レールは果てしなく
心躍る未来に向かっていた

淋しげな眼をした
白いワンピースの少女でさえ
いつか、必ず
笑顔を見せると信じていた

祖母は語った
遠いセピアの物語
「めでたし、めでたし」、で終わる
同じ話を、何度も、何度も

空から黒煙が消えて
レールはいつか終わる、と知った

街は、清潔で無表情になり
山野からは、人影が消えた
「めでたし、めでたし」、の意味が
曖昧に、ぼやけてしまった

白いワンピースの少女は
淋しげな目で
涙を流し続けるほうが
良かったのかも知れない

そぼ降る雨の湿気越しに
暑い、ロボットのような夏が来る

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