また、イスのせい/「ま」の字
 
また、イスのせい
名のような
となえる声をかかえて 儘(まま)のみちゆき
昼下がりの野辺は
視界を圧するしろい雲
暑くてあつくて まだ夏のあかし

山本通は一本道
左に傾く舗装に沿って
冬の風に苛まれた樹木らが
夏(いま)は「て」の字に荒れて立つ

了解も
理解もつけず
車が窪地に飛び跳ねる
轟音が野面を渡る
あの男のからだを踏み熨して作ったこの道
決起はおろかだったのか 
野心は悪なのか
密告と傍観の溜まり水に
そっとうしろ手を浸した者らの沈黙が立ちこめ
道の先が
少しひかるのもおぞましい 敗れても

哀れみをかけて美しくもしてやらぬの
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