幻影海溝 期の刻/北村 守通
 
波打ち際ってのは
墓場なんだよ
特に
砂浜だなんて
耐えられたもんじゃぁねぇよ

  ごらんよ

お約束の
貝殻に
こいつぁ
甲イカの骨だろう
イシモチかニベかな
尾っぽ広げなきゃぁ
判んねぇが
広げようがねぇよなぁ

  嗅いでみなよ

おたくの便所だって
こうまで
酷くはねぇだろう
これが
墓場の臭いなんだよ
ここにゃぁ
オーブンなんてなくって
  遠
 遠遠
遠赤外線と
勤勉な
働き蠅達だけが
頼りなんだよ

  そうして

あるいは今立っている
この数えることの出来ない有限の
砂の一つとなり
あるいは
後ろのハマヒルガオの
腹を満たし
それでも
使い道の無い奴ぁ
やっぱり
海に返送されるってぇ
仕組みさ

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