星空に降りていく など五篇/クナリ
あの星空に向かって降りていく
天地も理屈も 手を放す
あの星空に向かって降りていく
ずっと空を見上げて生きてきた
あの星空に向かって降りていく
仮初めでつかの間の幻想へ
あの星空に向かって降りていく
今だけはただ確かに一人の私。
<わき目も振らず>
わき目も振らず
ただ一つのものだけを
全部犠牲にして追い続けたら
全ての荷物を捨て去って
自分に出来る一番の速さで追い続けたら
犠牲にするものが増えるたびに
追いかけているただ一つのものが
どんどん速さを増して遠ざかって行く
自分に出せる一番の速さでも
決して追いつけないほどに
そうして
それまではあんなにのろまだったはずの
生きている限り追いつかれないとも思えたはずの
あきらめがすさまじい速さでやってくる
何一つ捨てなければよかったと
嗚咽しながら隣を見たら
背負いきれないものものを載せて
泣いてつぶれた 背中が一つ。
<どこへでも>
どこへ連れて行ってくれてもいいよ
ここがどこなのか教えてくれたら。
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