ふたつ めぐる/木立 悟
止まぬ言葉が
ちりぢりに降り
器からこぼれ
鳴りつづけている
瞳の痛みが
舌を浮かし
別の舌をもとめさせる
細く小さく
なぞるように
厚い泡が水面に浮かび
無数の空を見つめている
甘い色の
虹彩の失い膜
紐を用い
見えるものを分かち
遊びはすぎる
高みへ高みへ
傾く径
岩から生まれ出た街が
雪崩のように低地に押し寄せ
海に触れることなく止まり
空を見上げ ひび割れてゆく
青は北にわだかまり
近づくものを冷やしている
自身を解きながら旋り
地を水を
慈悲なく染めては捨ててゆく
色も渦も低くなり
雨は斜めに遠のいてゆく
夜の晴れ間が照らす足跡
崩れた街を二重に巡る
言葉はなおも降りそそぎ
あふれあふれ あふれ流れ
器はひとつの音の泡となり
拙い舌
拙い瞳のはばたきを見る
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