淵/梓ゆい
 
未熟な者が

(死にたい・・・・。)とつぶやいたとき

隣の老いた男は

下を向いたまま語りかけた・・・・。

「早くに死ねば、どんなに楽だったか。。」と・・・・。

ぼろを纏い

深いしわと硬い右手は

負で覆われた蒸し釜をかち割り

おなじ風貌の左手は

未熟者の手を引き寄せて

無言で背中を押した・・・・。

「お父さんとお母さん・・・・。

そして、自分自身に謝りなさい!!」

・・・・。

・・・・。

広い天井。

白濁色の蛍光灯。。

薄目の視界に

誰かの顔が見える・・・・。
戻る   Point(0)