自然/藤原絵理子
葉桜を揺らす風
自然に毛虫は落ちて
あたしの腕に赤い斑点を作る
毛虫は落ちる,自然に
薄暗い図書室の奥
自然科学の歴史書が
埃に埋もれて死にかけている
母の胎内であたしは
魚になり蛙になり蜥蜴になり
鳥を経て人間になった
自然に
攻撃性を身につけ
征服する快感は知っていた
知らぬ間に,自然に
怒りは自然な感情
あたしは
悪に怒り
正しいことにも怒る
哺乳類は次に
どんな動物に進化するかな
卵を体内に取り入れてきた歴史なら
次は子孫を体内に残すかな
母の体内で
過保護に育った子供は
母の胸を食い破って
呼吸を始める
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